36話「アフロディアに花束を(後)」シナリオコピー 1

36話シナリオです。
現物は友達が持ってて
20年位前にコ○ーさせてもらいました。 
ものすごくたまにオークションでも見かけます。

今回取り上げるに当たって
現物で確認したい事があったので
改めて 貸してもらいました。

中身の紹介は
コ○ーをスキャンした物なので
ちょっと見難いかも?ですがご了承ください。
(本をスキャンすると見やすいけど痛んじゃうから)

36話はシナリオと決定版の差が激しいのですが
きちんと紹介している媒体が極端に少ないのが問題・・・

唯一、丁寧に取り上げてるのは81年葦プロダクション発行の「宇宙戦士バルディオス(通称 豪華本)」
豪華本の全話あらすじは当時葦プロに在籍していた山崎昌三さん(後の武上純希さん)
執筆・・・・と監督の広川和之さんから伺っています。
どの回を読んでも面白いのですが36話も良いですよ~
豪華本はバルディオスのバイブルなので
持ってない方はオークションや専門店で入手できるのでご検討ください。
(つーか再販プリーズ)

ロマンアルバムなどのムック本や当時のアニメ雑誌もごく簡単な紹介に留まっています。
(BFSに連行されたアフロディアが脱走の末マリンの腕の中で死んだ 程度)
なので今回はシナリオだけでなく豪華本あらすじと何がどう違うのか
そこに重点を置いています。

このシナリオを初めて読んだ時は豪華本あらすじとの違いにホントにびっくりしました。
いのまたむつみさん描くカラーコンテとも全然違うし。
長く疑問に思っていたのですが2007年頃に36話コンテ担当でもある広川さんに
お会いしてお話を伺うことが出来ました。
36話あらすじがシナリオから大きく変更しているのは広川さんがコンテの段階で
手を入れたからだそうです。
「BFSに連行されたアフロディアが脱走して最後に死ぬ」の一点を残し
どう展開し着地させるか、作劇の部分は全て変わっているのです。
しかしながら完成版の36話コンテは存在しないそうです。

以下は広川さんから伺ったお話です。

「より良いものにしようとギリギリまで粘って考えていて
(36話コンテに時間とりすぎて(広川さんが)やる予定だった39話コンテを
山室清二さんに変わってもらったりもした)
36話作画担当のスタジオZ5との作画打ち合わせにも完成しなかったので
出来上がっていたAパートだけ打ち合わせをし
レイアウトの段階、コンテBパートの制作途中で打ち切りが決まりそこで作業が止まってしまった。

Aパートは完成していたが作業上必要な部数
(10とか20とかごく少数)しかコピーも取っていないので現存しないのではないか、
商品として販売するためにBパートを描いた覚えは無いので完成版の36話コンテは存在しない」

とのお話でした。
ではいのまたさんのカラーコンテはなんなのか?
これは

「具体的にイメージしてもらうために「36話はこう締めるつもりだった」
を豪華本用に(広川さんが)をラストだけ抜き描きで描いて、それをいのまたさんに清書してもらった。」

とお聞きしています。

さらに突っ込んで
アフロディアが泣いて詫びるあのラストまで(コンテ上、演出的に)
どう繋げるつもりだったか
(Bパートは戦闘シーンもあってアフロディアの気持ちの推移を描くには時間が短い)
もお聞きしたことがあります。
その時のお返事は

「それを考えていたんだよ。
考えて考えて考えて考えてたら時間がなくなっちゃった(打ち切りが決まった)」

でした。

35話のように完成品コンテの清書ではない
の意味で、豪華本いのまたさんコンテを作為に捕らえる向きもあるかもしれません。
でも残された資料をたどりシナリオからの変更点を見れば
より良い物を作ろうと、どれだけ真摯に対応していたかも解るのではないかと思います。

めくって1枚目です。

折しわがついちゃってキレイにスキャン出来なくて
読みにくいですね。
すみません。

制作スタッフ

制作 佐藤俊彦 壷田重夫
プロデーサー 草野和郎 加藤博 
原作・構成 酒井あきよし
総監督 広川和之
総作監 田中保
美術 新井寅雄
録音監督 小松亘弘

このページにはありませんが
36話は
脚本、筒井ともみ
絵コンテ、演出、広川和之
作画監督、本橋秀之
と豪華本に記載されています。

キャラクター設定資料集や手書きスタッフリストも同じ記載
作画はスタジオZ5 とあります。
シーン1,2
35話ラストの続きから始まります。
35話で脱走も発覚してるのでネグロス率いる追撃隊がアフロディアを追います。
2P~9Pまで飛ばしましたがこんな場面が入ります。

海面に漂流したアフロカーに近づくパルサバーン。マリン、アフロディアを救出(シーン3,4)
アフロを連れ帰ったマリンを非難する雷太、オリバー&固い表情のジェミー、虚勢を張るアフロディア
アフロを連行する雷太、オリバー。アフロを罵倒する隊員(シーン5,6)

シーン1~4までは豪華本あらすじとさほど変わりないようです。
違うのはシナリオだとアフロディア救出の際にアフロカーが大破(海に沈む描写がある)する辺りかな。
(なのでシナリオだとBFS脱走に使われるのはバルコプター。豪華本あらすじだとアフロカー)

シーン5,6は映画も同じようなシーンがあったので想像しやすいですが
下に上げた本橋さんの原画(下段右端)を見る限りコンテのアフロディアはマリンに抱きかかえられ失神状態
多分、歩けないし話せない。
シーン5、シーン6もコンテは違った表現になってるかカットされていると思います。

9P最後からの「シーン7 司令室」
ここから大きく変更があります。
10ペーも引き続き「シーン7 司令室」です。

12P13Pと飛ばしましたが
司令室で雷太、オリバーはアフロディアを殴る、蹴るの暴力を加え
止めようとするマリン(ジェミーは加わりはしないけど止めもしない容認の姿勢)と
認める博士。

「シーン8 地下室」
に場面転換して二人からアフロディアへの暴力はさらに続きます。↓

酒井あきよしさんの小説は36話シナリオと劇場版をミックスさせた内容なので
36話あらすじを知るって意味では資料になりません。

逆に36話シナリオがどんなだったか、って言うと酒井さん小説の通りなんですが
シナリオで言う「シーン7司令室」ここでちょっと変化があります。
小説では月影が、個人的な制裁を加える前に脳波探査にかけて情報を探り出す、の命令が出るのです。
(小説の月影は劇場版に準じてるのでまだ生きている)

36話はシナリオの段階では制裁ばかりで脳波探査が無いのです。
「雷太、オリバーのアフロへの私的制裁→博士の命令で脳波探査に
Aパートの大きな変更点です。

決戦を目前に控えてるわけですからリンチなんかしてる場合じゃないんですよね、状況的に。
脳波探査にかける事でアフロディアは苦痛を味わうわけですから
隊員の復讐心を満たしつつ情報を得る、という戦略上の目的も叶えられるので現実的です。
それに画面に華もあるんじゃないかな。
活字ならともかくシナリオのまま、力任せに男2人が傷を負ってる女に一方的に殴る蹴るを延々続けるのは
絵にした時にちょっとね・・・(36話作画はリアルに綺麗なZ5担当だし)

脳波探査のシーンは劇場版でもありましたよね。
あれは36話Aパートのコンテを拾ったわけです。
この辺は原画が残されているので見てみましょう。

徳間書店月刊アニメージュ81年8月号。
資料館の別ページ35、39話簡易紹介と同じものです。
(本文中「34話(未放映)」はおそらく「36話(未放映)」の誤植と思われます。)

徳間書店ロマンアルバムデラックス47「宇宙戦士バルディオス」
「Z5バルディオスを語る」中では要約すると

「自分(亀垣)の担当カットは手をつけないまま打ち切りになったが本橋秀之さんの担当カットは全部終わっている」
「本橋さんは打ち切りが決定しても描いていた」

の亀垣一さんのインタビューも掲載されています。
本橋さん、描いてくださってありがとうございます!!(涙)

上の原画の中央、上段ですが、何か手に持っている男が描かれています。
5話で冷凍処理された世界連盟の技術者アランで手に持っているのは銃。
「アラン再登場」
シナリオ→コンテの大きな変更その2です。

シナリオ版BFS基地からアフロディアの脱走はシチュエーション、セリフ共に酒井さん小説、映画とほぼ同じで


制裁を受け失神したアフロが収容されてる地下室にマリンが単身訪問(シーン16)
マリン、アフロを拘束している縄を切る
2人は言葉を交わすも再び失神したアフロをマリンは治療のため医務室に運ぶ(シーン18)

医務室のドクター、治療を拒否するも博士の説得でアフロを治療(シーン19)
意識が戻った医務室のアフロ、ナースを脅しナイフを拾い脱走(シーン20)→マリンの居室に侵入(シーン21~22)
アフロ、就寝中のマリン殺害しようとするが果たせず愛を自覚(マリンは狸寝入りで一連のアフロ行動を把握)
(シーン22~23)
混乱のアフロディア、ジェミーを人質にとる&ジェミーの銃を奪い駆けつけたマリンと口論(シーン24~25)


ホント、酒井さん小説や映画のまんまです。
読みにくくて申し訳ないんですが以下がそこら辺のシナリオです
シーン18の前17は CM とあります。
シナリオだとマリンがアフロの収容されている地下室に入室するまでがAパートです。
 
 
ではコンテ→あらすじでどう変わったか、詳しく触れていきます。 
(BFSに連行されてから脱走まで)

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(2019年8月)