第19話 「亜空間に架ける橋」
酒井あきよし脚本 山室清二コンテ 山田雄三演出 
1980年11月3日放映


突如アルデバロンに連れ去られたクラン博士とスイスラー市民、そして謎の第10惑星。
真相を探るべく海王星に飛んだバルディオスチームが見たものは
地球に迫る巨大彗星と、立ち向かうクラン博士だった。
過酷な任務に次々と倒れていく地球人たち・・・
アルデバロンは彼らに地球を守らせた上で奪うつもりなのだ。
協力を申し出たマリンはクラン博士の犠牲と引き換えに市民を救出、そして地球は守られたのだった。


13話「思い出のリトルジャパン」に引き続き鬼門な19話。
何回見てもこの話から何も感じることも出来ないし好きになれません。
なのであまり書くこともありましぇん。
「19話に何を書くか」はHP開設以来の悩み(笑)だったんですが
最近になって19話のアフレコ台本を入手!
「やった〜!これでネタが拾えるじょ〜」と喜び勇んで読んだものの
活字で読むとかえって辛いものが・・・・

SF考証の甘さと作品感的に違和感のある人物描写。
この2つのうちどちらかでも、もうちょっと練られていたら・・・てのが素直な感想ですね。
彗星をブラックホール化って言われてもピンとこないし(そりゃ、私だけか?)
連れ去られた挙句の強制労働じゃねえ・・・
それでも「地球を守って死ぬ」って言う姿勢には正直、頭が下がります。
偉いなあ・・・でもいいんですか?そんなで??
そして追い討ちをかけるように画面に迫るやられメカ・巨大エイ。
疲れるなあ・・もう。

19話は素晴らしく絵が綺麗なんですよ。
バルディオスで絵が綺麗って言うとZ5的な絵が浮かんできがちですが19話もいい。
艶っぽい絵、って言うのかな。
いのまたさんも参加してるしキャラクターの微妙な表情が見せ場ですね。
何気ないセリフも絵でみせてくれるのでおしゃれ度アップ。
アフロディアの鞭裁きも見所です。
アフロ様は過去にもナイフを振りかざしたり突然「弟のかたき〜」と叫びだしたり
ともするとヒステリックに見えがちなんですが、今回は作画の綺麗さで凛々しくも悩ましい。
軍服に鞭って萌え〜♪
無理にひねろうとせずに8話「ヒマラー山脈の決闘」のように
勧善懲悪な作りにすればもっと見やすかったんじゃないかって思います。

サブタイトルからも推測できますが、この話は映画「戦場に架ける橋」へのオマージュ・・
しゃれで作ったんじゃないかって気がします。
バルディオスがどう、とか言う前に作り手の趣味が前面に出てる。
わざわざアフロ様に鞭を持たせるあたり、楽しんで作っている感じは伝わって来るのですが
見る側が同じように楽しめるか?って言ったらちょっと疑問。
ストーリー重視の方にはなんとも物足りない気もしますが
次が重い話なんでこういうのもいいでしょ。
例によってラストでは涙に暮れるマリンですが、うーむ、あんまり・・・・
塩沢さん、熱演されてるんですけどね。
ごめんなちゃい。



第20話 「甦った悪魔(前編)」
首藤剛志脚本 山室清二コンテ 西村純二演出
 1980年11月10日放映


かつての東西冷戦の遺物、ベリシアに眠る水爆を巡る攻防は
決着のつかないまま痛み分けとなった。
だが偶然にも基地を見つけ出した地球、
Sー1星の混成部隊は自らを「第三帝国」と名乗り独立を要求。
それは自分たちを戦場の駒と扱う上層部への復讐でもあった。
両軍はそれぞれ特殊部隊を送り込むが、荒れ狂う雪原を前に目的を果たすことなく全滅。
残されたのはマリン、そしてアフロディアだった。


思い起こせば今を振り返ること20数年前・・・
「甦った悪魔」と言えば後編のマリン、アフロの絡み以外、眼中に無かったバカな私・・・
って、それもある程度やむなし・・か?
20話と21話ではお話の柱になる物が全然違うので
それぞれが独立した話のような印象が強い。
21話の方がストーリー的にも山場だし、アフロ様も登場するので
続けてみると後編の印象ばかり残ってしまうんですね。
では前編がつまらないかと言えばもちろんそんな事はありません。
ちょっと泥臭い前編があるからこそ、後編が生きてくると言うものです!

終わりから始まる物語。
フィクションの世界にはこんなパターンがあるようですが20話もこの傾向でしょうか。
これだけで1本作れそうなベリシア攻防戦が終わるところから
このお話は始まります。
しかも、お約束の合体シーン含め、戦闘シーンをこの部分であっさり処理。
この構成は上手いっすね〜
そして最後はまさかのマリン&アフロディアのツーショット。
血生くさい白兵戦から急転直下、ボディラインも悩ましいジャンプスーツ姿でご登場とあっちゃー
否が応でも期待は高まります!
殺し屋軍団一人一人に見せ場を作りつつマリンを一人にするあたりも見せ方がお上手。
後半にかけてバルディオスが出るでなし、登場人物もマリンの他はゲストばかりで
ついていけなくなりがちなのに最後までお話しを引っ張ってくれて飽きさせません。

えーっと、殺し屋さん達って結局何人いるんでしたっけ??
第三帝国のメンバーもそうだしこの回はゲストキャラが多い。
どうしても十把一絡にくくっちゃって名前も顔も覚えられないけど
「殺し屋」「第三帝国」ってグループになるとぐっと存在感が増してくるんですよね。
それだけ彼らの言い分には耳を傾けたくなる何かがある。
それは単にセリフだけでなく、この回全体に絵空事じゃない
リアルさがあるからだと思うんです。

殺し屋たちは見た目も地味だし「殺し」「殺す」といったセリフを連発していて
実に殺伐としています。
後編はアフロ様もいるせいか、アクションも華やかなのですが
前編で登場する殺し屋軍団のサバイバルゲームは地味・・
を通り越して、かなり異質なんじゃないでしょうか。
冒頭で描かれたベリシア攻防戦もリアルで血なまぐさいし
水爆の爆破で生き物が一瞬のうちに滅びさる様子や
マリン達がパラシュートで地上に降りるシーンなんも史実に近い印象で見ていてドキッとします。

あのー、たいがいは戦闘シーンって言ってもドンパチやるだけで、
そこに「人の死」は見えてこないのが普通ですよね。
後編でマリンは「生身の人間の命を忘れていたのかもしれない」とつぶやきますが
忘れる、忘れない、の前に
そんなものは感じさせないのが従来の路線だったかなあ・・と。
主役(ロボ)が戦う様は現実離れしていてカッコイイ。
誰か死ぬ、って言ってもそこには何かしらの華やかさと甘い感傷があるしね・・・

ところが今回の話ではもー、死ぬ、死ぬ。
バタバタ、わらわら、情け容赦なく死んでいきます。
そんな現実を前に、行くあてのない連盟軍兵士は
「なぜ俺たちがこんなに苦しまなければいけないんだ」とつぶやき
アウトローの殺し屋たちは逃げ出そうとする。
「正義のため」だの「平和のため」だの派手なお題目をとなえても結局は汚れ仕事。
ホントは誰もやりたくないからそんな大義名分でもないと指揮するほうは困っちゃうんでしょ。
マリンの掲げる大義名分「父親の仇」も
殺し屋たちの前には一笑に付されてしまい、聞いてもらえません。

人の死、そして人を殺めるとは一体どういうことなのか。
マリンが見、聞き、感じたものはなんなのか。
それは続く後編で明かされることとあいなります・・・・・


第21話 「甦った悪魔(後編)」
首藤剛志脚本 湯山邦彦コンテ 湯山邦彦演出 
1980年11月17日放映


襲いかかる狼の群れと広大なベリシア原野。
目的を果たすために二人がなすべきは私情を捨てた協力だった。
ふと身を寄せた洞窟で静かに語り合うマリンとアフロディア。
誰を意識することもなく敵同士の枠も外れた今、二人の胸にはひと時の安らぎが生まれつつあった。
けれどここは戦場。
共に助け合い任務を果たした二人は再び敵味方に別れていくのだった。


マリン、アフロディアinベリシア。
改めて気づくのですが映像がとても綺麗です。
マリンはお馴染みのBFS隊員服ですがアフロディアは衣装を新着してますよね。
これはもちろん「厳寒の地にのぞむ」って言う設定上の理由からなんだと思いますが
だったらマリンも防寒服にしてやれよ!じゃないですか。(笑)

アフロディアが普段着ている軍服はワインレッドなので青系統のマリンと並ぶと
互いを引き立たせると共になんとなく対照的に見えてしまいます。
これはきっと反対色に近い組み合わせだからですよね。
ところが今回着用の防寒服はマリンと同じ青系。
背景に使ったベリシアの寒色と相まって、とても一体感を感じさせる配色です。
同じ場所に、同じ気持で挑んでいる・・・
そんな二人の心情が伺える色使いが心憎い。

そしてこの服のデザインがいけてます!
軍服はボディラインを出しつつも(やはり軍服なので)どこかカチッとした堅さがあるのですが
今回の服は女性らしさを前面に打ち出した柔らかいデザインになってます。
任務の内容を考えたら普通しないイヤリング(←耳、凍っちゃうよねえ)もちゃっかりしてるあたり
今回のアフロディアはいつになく女・・・・
セミヌード姿や服を脱ぎ着するシーンも多く、
視聴者はまず目でアフロ様の悩ましさにノックアウトされてしまう事でしょう。
マリンと一つの毛布に包まって一夜を明かしたり
第三帝国にいたっては「子孫は必要」「S-1星の女はめったに手に入らない」と
あからさまにモノ扱いされてて、全体のムードがとても性的で大人っぽい。
なんかドキドキしちゃう〜

このドキドキ感はマリンも同じだと思うんですよね。
健康な青年男子なら治療の為とはいえアフロディアの体見ちゃったら鼻血ブーでもおかしくない・・
とは世の青年男子に失礼すぎるでしょーか!
まあ、鼻血出せとは言わないけどドキドキくらいするのが普通でしょう。
アフロディアの女度がいつになく上がっているため、今回の2人は「敵味方」よりは「男と女」。
互いに今まで気がつかなかった相手の異性を感じてしまっているはず!
が、しか〜し・・・
マリンがアフロディアのように肉感的に男っぽいかと言えばそんな事は全然無くて
むしろ若者らしい潔癖さ、志の高さといった精神面で「男」を表しているみたいです。
マリンだってアフロディアの肌とか、暖かさとか体で感じるものはあったと思うんですよ。
ここは一つ、マリンの動揺を示すような動作なり言葉なり欲しかったか?
とも思うけど、この場はバルディオスらしい抑えた描写で良かったのかもしれません。

どろどろと野望渦巻くアルデバロン幹部に比べ、マリンの心持のなんと清らかな事よ。
もちろん第三帝国みたいに鼻の下伸ばしたりもしません。
洞窟シーンはついついアフロディアの方に目が行ってしまいがちですが
一連のセリフはマリンの最大の見せ場でもあります。
そもそもマリンがここまで内面を吐き出した事って今までなかった。
本音を洩らせるのがアフロディアしかいなかったのなら、今までのどんなエピソードよりも
彼がいかに孤独だったか伝わってくるというものです。

不可抗力だと解っていても残された唯一の肉親
アフロディアと語るミランの死がどれほど重かったか。
「弟の分まで生きて欲しい」とは立場上、なんとも矛盾した発言ですが
人間の腹の中は果たしてそんなに綺麗にスパッと割り切れるものなんでしょうか。
18話「裏切りと暗殺の旅路(後編)」でも丸腰のガットラーを撃てなかったマリン。
今回も後半で敵を射殺したアフロディアに「なにも殺さなくても」と弱気です。
「俺は誰も殺したくなかった」のに結果的には戦いの最前線にいる違和感。
だって戦わなければ何も守れない。
だから仕方ないのかもしれない。
仕方がないけれどこの手で人を殺め、血を流し続けてそれでいいのだろうか・・

マリンは特殊な環境で育ったアフロディアと比べると甘く、弱いところもある凡人なんだと思います。
だからこそ大切な何かを守るためにどこまででも強くなっていった。
弱さを抱えたまま満身創痍になりながらも戦っているのです。
そしてガットラーと同じように誰もが逆らえない力を武器に
命を弄ぶ第三帝国が許せなかった。
第三帝国は共通の敵を作る事で2人を組ませた、と言うだけでなく
アフロディアに、なぜマリンが祖国に背いてまで戦い続けているのか
を理解させる意味でも上手い設定です。
ただ奪うために戦い「力が全て」の価値観で生きてきたアフロディアですが
今回のエピソードを通じ、そんな自分の生き方を見つめなおす展開になっていると思います。

テレビシリーズをずーっと見ていて思うのですが
もともとはマリンを憎んでいたアフロディアが180度変わっていく様を描いていったのが
2人の愛憎劇だったのでしょう。
マリンとの係わり合いを描いたのが
11話「情無用の戒律」17,18話「裏切りと暗殺の旅路」、と今回の「甦った悪魔」。
続く22話「特攻メカ・ブロイラーの挑戦」25話「ガットラー暗殺計画」はガットラーとのお話です。
「変わる」と一言で言っても間間に微妙なゆり戻しがあったり、
女であるがゆえの苦しみも混じったりと、この辺りの心理描写は実に巧みです。

今回の「甦った悪魔」でも「もしお前が弟を殺さなかったら・・・」
と思わず洩らしてしまう一方でアフロディアの戦闘能力はとても高い。
マリンに心を許しつつもその気持に溺れきってしまわないところが
心のひだの深さでもあり、その先への期待も高まると言うものです。
微妙な揺れはあっても最後まで筋の通ったマリンに比べ
アフロディアの移り変わりはじっくりと腰をすえて描かれており見ごたえがあります。
最終的には(未放映部分になりますが)ガットラーに造反していくわけで、その
ターニングポイントとしても今回の話は重い。
主役のマリンよりも時としてアフロディアの方が面白く思えてしまうのは
シリーズを通してアフロディアの心理描写が良い具合に盛り込んであるからなんだと思います。

「甦った悪魔」は基本的にはマリンとアフロディアのお話だと思うのですが
そこはバルディオスの抜かりのないところ。
たくさんのエッセンスが詰まっていてそれぞれの視点で見返してもgoodです。
身勝手極まりないとは言いつつも第三帝国の主張には一分の理があり、とても皮肉。
本放送から20数年を経て、ドラマとは違った形で東西冷戦は終わりを告げましたが
この設定のリアルさは空恐ろしいとも言えます。
作画的には前後編で一つの話なのに絵が違ってしまってやや違和感・・・カナ?
それでも20話と21話では話の中心が違っているので、
それぞれの作風にあっていると言う事で良しとしましょう。

なんだかキレイにまとめちゃいましたがやっぱり洞窟!!
最後は下世話な話で締めたいです!!
今回のアフロ様はちょっとスゴイ。
第三帝国に自分の女を利用していっぱい食わせる辺り
今までより、一皮も二皮も剥けてる気がします。
もしもし、アンタ女を捨てたんじゃなかったけ?
と意地悪してみるとそこにはやっぱり洞窟が・・・・・
前半のテントのシーンではうっかりバリアーはったりと抜け作なのに
第三帝国に移ってからはサクサク働いてずいぶんな女丈夫。
あの〜〜〜〜〜〜〜
世間様の言うところでは女は(男女)関係が出来ると強くなるとかなんとか・・・
なんか今回のアフロ様ってそんな感じがしてしまうのは私だけでしょうか。(爆)
内心、良いって思ってた男に体見られるとこうも変わるモンでつかね〜
全体のテーマは重いのですが2人を体で接触させる事で恋愛面の予感を感じさせるあたり、
やっぱりこの話は作りが上手い。
硬軟取り揃えて見せてくれますんで、初見の方は大期待で臨んでください〜♪


20,21話シナリオ執筆の首藤剛志さんのコラム
WEBアニメスタイルコラム シナリオえーだば創作術 
首藤剛志著 第29回 バルディオス愛憎改造計画……?

に関連エピソードが載っています。
(2011年3月追記)

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(2004年8月)