第12話「世界連盟から来た男」 
鈴木裕二脚本 野寺三郎コンテ 広川和之演出 
1980/9/15放送


世界連盟から派遣された敏腕のエリート将校ハーマン。
彼が温情主義の月影に取って代わる次期長官候補であることは明らかだった。
強引に我を通すハーマンに反発するバルディオスチームだったが
連盟の真意は身内意識に陥りがちなBFSのテコ入れだった。
ハーマンは憎まれ役を通したままBFSを去っていくのだった。


またまたキャラクター紹介話で今回は月影編。
他のメインキャラとは違い、ゲストのハーマンを通して司令官・月影像を描いた作りになっています。
「なーんだ、月影の話か」と思わずに!!
12話は密かに作画力の高い回であったりするんです〜
ださださのやられメカはとりあえずおいといて、バルディオスのアクションも良い♪
この回だけは月影でさえも陰りのあるシブイおじさまに大変身しちゃってたりします。

さて、その月影・・・
劇場版監督の鳥海永行さんが当時のアニメ誌でおっしゃるには
「(TVシリーズでは)性格がコロコロ変わっていて非常にわかりにくかった人物。」だそうです。
確かにシリーズ最初の何本かは
「あれ??この人どういう人??」みたいな印象が強いです。
厳しいんだか、甘いんだか、博士との上下関係もなんだかはっきりしない。
ただそれもこの12話と先の11話で一本化されたかな?ッテ気がします。
司令官と言うよりはお父さん。
トップの座にいられるのも陰に日向に博士のフォローがあってのこと・・みたいな〜
これじゃあ誰だってこの人が司令官で大丈夫??って思いますねえ・・
そこら辺の(視聴者の)潜在意識をすくい取った話とも言えるわけですけど
どうですか??皆さん?
ラストでハーマンの出した結論に納得してますか??(笑)

このハーマンと言う人物。
シリーズ後半にセミレギュラー化して
ラストまでのお話を引っ張っていく人なのですがいい味だしてます。
12話の作画は全体にシャープな仕上がりになっているのですがなぜかハーマンは絵が違う。
ハーマンは上条キャラのような気もするのですが
絵だけとってみても妙にキャラ立ちしてると言うか、月影と対照的に描かれて面白いです。

どうも当初の予定ではハーマンはホントに1回こっきりのゲストキャラだったようで
12話もシナリオ最終シーンでは
「ハーマンはその後、二度とBFS秘密基地に現れなかった。
アルデバロンとの戦いで戦死したという。」と言うナレーション入ってます。
フィルムになるまでのどっかの段階でハーマン延命路線に変更されたのかな。
月影戦死が動かせないなら、大洪水以降の決戦を科学者の博士一人で指揮するのは
ちょっと不自然だし、大人キャラが二人いればお話も進めやすいですもんね。
洪水後の敗色強まる状況下で博士を支え、残存兵力をまとめ
バルチームには叱咤激励、最後は敵要塞を道ずれに命を落としていく・・・
どう考えても美味しいキャラだっちゅーのは差し引いても、やっぱり司令官はこういう人に任せたい。
大洪水だってこの人が長官だったら防げたんじゃない??
って、ハっ!!!!!
もしかして地球を水没させるため(地球=Sー1の重大伏線のため)に
月影みたいなボンクラな人物を司令官にしたのかい!?
なんちゅー深い設定なんだ!! ←違うって

これはTV版・広川監督のアニメ誌での話なのですが月影も元々は
「ごくごく普通の質実剛健な長官」としか設定されていなかったんだそうです。
それが画面のような父性の目立つキャラに変わっていったのは
月影役の石森達幸さんの個性が色濃く出た結果なんだそうです。
いわゆる「キャラが一人歩きする」ってやつでしょうか。
石森さんも月影を気に入っておられたそうで石森さん的な役作りの結果
今までのロボット物には無いような、日本のお父さんっぽい長官になっていったんだそうです。

月影を好きな人は・・・多分いないでしょう。
司令官としてはヌケサクな感じが否めないし、敵役のガットラーに対してあまりに弱い。
でも私は好きだったりします・・・
司令官としてはダメかもしれないけど人間的に面白いじゃないですか。
未放映分の37話「亜空間要塞最後の日」の中でもハーマンとクインシュタインが
在りし日の月影を振り返ってこう言っています。
「彼の能力は平和の中でこそ発揮されるべきだった。」ハーマン
「地球のため、人間のため、理想を追いかける人でした・・・」クインシュタイン
博士もちょっと頼りない、ドリーマーな月影の人柄そのものが好きだったんですよ、きっと。

「博士、あなたの言うように月影長官は立派な人でした。」
12話はこんなハーマンの一言で終わっているのですが
このセリフが月影の人格、全てを語っているような気がします。
一生懸命がんばってるいい人には、なかなか難癖付けられない物じゃないですか。
ハーマンもとりあえずこの時点ではNGを出せなかったのかな〜
今言えない物はたいてい後になっても言えないんですけどね〜
劇中のマリンも「長官はいい人だ。」としみじみ語っています。
ぼけっぷりがどこかしらレイガンパパに通じる月影だからこそマリンも命を張れるという物?か?
見ている者を不安に陥れるほのぼの家族みたいなBFS基地&月影。
いい人、立派な人ってだけじゃーダメなのは百も承知なんだけど
没個性の劇場版の月影見てると、こう言うのもアリかな・・・って思っちゃうんですよね。


第13話「思い出のリトルジャパン」 
首藤剛志脚本 佐藤元コンテ 大庭寿太郎演出 
1980/9/22放送


今や地球防衛の最重要地点となった月面Mー29地点。
かつてそこにあった移民の町、リトルジャパンは雷太の故郷でもあった。
誰からも見捨てられ廃墟と化したはずのリトルジャパンだったが
人知れず町に残った老人達はここを終の棲家と決め、
アルデバロン、世界連盟双方にに無謀な攻防戦をしかけていく。
BFSはMー29地点を死守するも、老人達はリトルジャパンと共に散っていくのだった。


キャラ紹介話も13話「雷太編」でようやく一回り。
敵味方、どちらの陣営にも属さずに孤立するリトルジャパンの設定は
20,21話「甦った悪魔」に登場する第三帝国を思わせる物があります。
しかーし・・・・
膨大な水爆を手に両陣営を手玉に取る第三帝国とは違って
ローマ風の衣装に身を包んだ怪しいジジババだったり、
まるで映画村のようなベタな「日本」だったりするんで見ていてちょっと辛い。

DVDーBOXの解説によると首藤さん的には29話「地球氷河期作戦」よりもお好きな話なんだそうです。
うーん・・そうか。
私は何度見てもこの話が苦手なんですよね。
作画と演出がもうちょっと違ったら別の目で見れたのかなあ・・・
これはもう趣味、嗜好の問題なので13話が好きな方には申し訳ないです。
何かしらホロリと来る物もあるんですけどねえ・・・今ひとつ胸に響いてこない。
雷太とアンドロイド・ママとの一連のやりとりを「可哀想だな」なんて思ってみたり
「いや、これで吹っ切れたのか」なんて思ってみたり。
(雷太は親の死を二度経験した事になるんですよねえ・・・)
アレコレ思う物のそれ以上広がらない。
個人的に苦手な方のツボにはまってしまってそこから抜け出せないんです。
スイッチが入らないと言うか、なんと言うか・・・
バルディオスと言うアニメ自体もそうですけど好悪の別れる話が多い・・・ですか??
なんとなくそんな気がします。

13話をすごく好きな方にお話を伺ったことがあったんですけど
ああ、そういう見方もあるのか!ってすごく新鮮でした。
好きじゃないと何も出てこない部分もあると思うので、13話に関しては言うより聞くの方がいいですね。
と言うわけで今回はこれで終わりです。
13話ファンの方、良かったら何か書いて下さい。


第14話「さらば愛しの妹よ」 
筒井ともみ脚本 宮崎一哉コンテ 宮崎一哉演出 
1980/9/29放送


機密文書保持のため、世界連盟に呼び出されたバルディオスチーム。
連盟勤務の妹、エミリーとの再会に沸くオリバーだったが婚約者ロイの不審な行動に悩む。
ロイにスパイの疑惑・・・
調査結果に驚くオリバーだったがロイは功を焦るあまり二重スパイを務めようとしていたのだった。
全てを無くしたロイにそれでも付いていくエミリーを見送るオリバーだった。


今回もまた異色。
レギュラーだけどいまいちぱっとしないオリバーの、しかも妹の話。
申し訳程度にしか戦闘シーンもなく、主役メカ・バルディオスも登場しません。
当時としてはあるまじき行為で、内容的にはSFでもロボット物でもなく
ホームドラマだと思って見た方がいいんじゃないかと思います。
アニメである必要性も感じないですね。

14話は7話「愛の墓標」、9話「巡り会い。そして・・・」と同じ筒井ともみさん作なのですが
この3本、どこか似ています。
筒井さんは女性心理の妙を書かせたら上手い作家として頭角を現していたのですが
バルディオスでもそんな作風を生かした話をいくつも書かれています。
14話の先ではジェミーの恋心を書いた28話「決死のランデブー飛行」
アフロディアの死を書いた「アフロディアに花束を(後)未放映」が筒井さんの担当回。
他には3話「スパイの烙印」もそうなのですが、
この話はバルディオス登場前の基本設定を書いたお話なので
筒井さんが本領発揮出来る話じゃないかも・・です。
それでも3話もジェミーが洗濯したり、長官がコーヒー入れてたりとやけにホノボノして
全体の調和を乱す、と言えばそれまでなのですが
こういうのは筒井さんならではだなあ、と思ってみたり。

バルディオスは救いようのない暗い話だけれど24時間年中無休で戦争しているわけじゃーない。
14話は戦闘シーンが少ない分、そんなキャラ達の日常をかいま見れる話でもあります。
マリン、オリバー、ジェミーは一応、三角関係の間柄なのですが
エミリーにマリンを紹介する時のオリバーのセリフ
「右のハンサムがマリン・レイガン。」や
親身になってオリバーの相談に乗ってあげるマリン、と言った普段見れないシーンもあったります。
そう年中トゲトゲしてもね。(笑)
戦争の影のない、明るいセリフ回しのマリンもこの回ならではで、マリンバカ的には嬉しいですねえ。

14話はこういった何気ない、でも微妙な心理描写が多いのでアニメには不向きな話かもしれないです。
作画が良ければ違ってくるのでしょうが個人的にシリーズワースト1なんじゃないかと思う程なので
表情、その他からキャラの内面をくみ取るのはやや困難。
(特にオリバーがヒドイ。この回主役なのにな〜笑)
お話の地味さに花を添えてしまっています・・・・・もちろん悪い意味で・・・

それでも見直してこの話が大好きになったのは
筒井さんでなくては作れないような魅力的なキャラが登場しているからです。
9話のルイーザ(ジェミーママ)も14話のエミリーも凡人なんだろうけど、きちんと職業を持ち
自分で道を切り開き、歩いていける素敵な女性です。
ダメ男(失礼)のロイの言うままに兄を騙し、あんな惨めな結果になったのに付いていく姿には
「ちょっと待て!オリバーも兄なら止めろ!!!」
と言いたくなりますが、どうも後の報告ではそれなりに幸せになった様子です。
現実問題、あんな男に付いていって幸せになれるのか、オイ!?
と言うツッコミはさておき、そこまで本気なら応援するしかないですよ。
それで不幸になっても自分の責任として、立派にやっていけそうだし。
オリバーもロイではなく、妹のエミリーを信じていたからこそ行かせたんでしょう。
ラストで感極まったエミリーの一言「お兄さん・・ごめんね。」は
この話を締めくくるにふさわしいセリフですよね。
もうそう言うしかないじゃない。

幸せも不幸も全ては自分の手の中に。
ルイーザとエミリーを見ているとそんな言葉が浮かんできます。
作品としての仕上がりは誉められた物じゃないし、人によっては感情移入しにくい話だとは思いますが
「人間ドラマ・バルディオス」的にはこういう話があってもいい。
そんな風に思ってしまいます。

   

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(2003年7月)