未制作5話分 シナリオ&コンテ概要 
HP開設以前にバルディオス友達から35話、37話シナリオ
35話、39話コンテを譲り受けてました。
素人なので見方は正確に分からなかったけど中身の濃さ、深さに驚きました。
あらすじは豪華本でもわかるし、いのまたさんの清書コンテも素晴らしい。
でもそれとは別にシナリオはセリフの1つ1つが
完成版のコンテからは映像作品として何処を目指していたかが伝わってきました。
こんな物を作ろとしていたのか・・・ビデオも普及していない、日曜早朝の放送ために・・

バルディオスはTV放送打ち切りのため最終回含むラスト部分は正確な内容さえ伝わっていません。
映画で完結、と謳われた劇場版はTVを補える代物では無かったし映画としても評価できませんでした。
そもそも肝心のラストがTVで予定されていたものと違います。

他の話数のコンテやシナリオも見てみたい。
ゆくゆくは広くバルディオスファンに見てもらえる状況=商品化 になれば良いのに・・・・

当時の同人誌情報によると放映分、未放映分のシナリオは一冊500円
コンテは2000円でアニメショップ(多分 吉祥寺のあいどる)で売られていたそうです。

制作元には何も残ってないだろう・・と複数の関係者様から伺っていたので
中古市場と個人的に所有されてる方を探し、お願いする形になりました。
お世話になった皆々様、ありがとうございました。
20年かかりましたがやっと5話分(コンテは存在されてると思うもの3話分)入手する事が出来ました。

35話「アフロディアに花束を(前)」(「さらばアフロディア」は仮題)シナリオ&コンテ
シナリオ 酒井あきよしさん
コンテ 湯山邦彦さん

バルディオス友達にHP開設前に譲り受けました。
どちらも読み応えがあり面白いです。
アフロディアとガットラ―の描写が生々しく、去られる側のガットラ―の悲哀も見事。
大人の物語です。

豪華本等、各種出版物は35話コンテは山室清二さんとなっていますが
中を見る限り表紙にあるように35話コンテは湯山邦彦さん作で間違いないと思います。

シナリオ、コンテ共に資料館で紹介済み。

36話「アフロディアに花束を(後)」(「さらばアフロディア」は仮題)シナリオ
シナリオ 酒井あきよしさん、筒井ともみさん
私が持ってるのは実物を所有してる友達から取らせてもらったコピーです。

シナリオのみで、完成品の36話コンテは存在しません。
これは36話コンテ担当の広川和之さんから伺いました。
36話コンテ執筆中に打ち切りが決まり作業が止まってしまったそうです。
コンテはAパートだけ描き終わっていたのでAパートだけ スタジオZ5と作画打ち合わせをしたそうです。

「描き終わっていたAパートは作業上、必要な部数しかコピーを取っておらず現存は難しい。
バルディオス関連の資料は幾つか残してあったが引っ越しの際に処分してしまったので
(私がお会いした2007年の時点で広川さんのお手元にも)何も残ってない」
と伺っています。
描き終わっていたAパートのコンテ、もし どなたかお持ちならぜひ見せて頂きたいです。

資料館で紹介済み。
中身は豪華本等で世に伝えられてる内容とはかなり違います。
(コンテ作業の段階で作劇にかなりの変更が加えられ、
豪華本のあらすじには変更版が採用されているため)
正直、読むとがっかりしてしまう内容なので補足説明を加えた方がいいと思います。

37話「亜空間要塞最後の日」(「亜空間要塞最期の日」 は仮題?誤植?)
シナリオ 首藤剛志さん

これもHP開設前にバルディオス友達から譲り受けました。
ハーマンがBFS基地でネグロス率いる亜空間要塞に特攻、相撃ちする話です。
大きな輪のある太陽系の象徴、土星が消滅し地球=S-1の仮説が動かしがたくなります。
決戦を控えたメインキャラの人間ドラマも読みごたえがあります。

37話と続く38話シナリオ執筆は首藤剛志さん!
地球=S-1のからくりを考えガットラ―とアフロディアのキャラクターに肉付けをし
移り行くアフロディアの心理をシリーズ中盤から作り上げた功労者です。
首藤さん執筆回に外れ無し!
首藤剛志さんファンの方にもお薦めです。

37話コンテの方は存在しないと思っています。
理由は広川和之さんから
「未制作5話分のコンテは全部が完成していたわけではなく、そのうちの1本は自分が担当した36話」
と伺っていたからです。
「そのうちの1本」とおっしゃるからには他にも完成してない話数があるかもしれず
それが37話なのではないかと思いました。
理由は37話は豪華本にいのまたさんの清書コンテが載っていないからです。

豪華本掲載のいのまたさんの描かれたコンテは
出来上がった完成版コンテを元に本に掲載したときに見栄えがするよう
いのまたさんが清書したものです。
(36話に関してはラストだけ広川さんが豪華本用に抜き描きで描いたコンテをいのまたさんが清書
と広川さんからお聞きしています)

37話コンテも存在していれば豪華本に清書コンテを載せると思うんですよね。
(って言うか載せない理由がない)
もちろん、実は存在している・・・とかでお持ちの方がいらっしゃればぜひ見せて頂きたいのですが・・・

 
38話「雷太よ明日を救え!!」(「大決戦!!さらば雷太」 は仮題)
シナリオ 首藤剛志さん
コンテ 野田作樹さん
(野田作樹さんは葛岡博さんの別ペンネームです)


地球=S-1が決定的になるも、今を生きようとするBFS隊員の姿が辛い。
マリンたちの奮闘にも関らず核汚染 雷太戦死。
やるせない・・・・

38話は謎の多い話数でした。
首藤剛志さんが小田原図書館に寄贈した首藤剛志さん寄贈の小田原図書館 寄贈資料
にも38話シナリオは入ってないんです。
未制作5話分、シナリオは印刷した完成版があがってるはず・・
と複数の関係者様の証言を頂いていましたが原物が見つからない。
ほとんど諦めていた所、コンテ所有者様と連絡が付きお譲り頂きました。

野田作樹さんは29話「地球氷河期作戦」のコンテも担当された方です。
29話があの通りの神回なので38話コンテも大期待してましたがやはり、やはりの素晴らしさ。
38話はスーパーロボット大戦で初ビジュアル化された
バルディオスの最終兵器 バルディロイザーが登場する唯一の回でコンテにもその様子が描かれています。
スパロボファンの皆様にも興味を持って頂けるのではないでしょうか。

文字で構成されるシナリオを画面にさせる「コンテ」と言う作業は
映像センスの問われるアニメ制作のキモなのだと思います。
コンテがあるならシナリオもあるはず・・・両方見たい、比べたい!
シナリオも揃えば未制作5話資料全体の価値も上がる・・・
と地道に捜索を続け無事GET!
長かった・・・・

 
39話「永遠への旅立ち」(「別れ・・・その愛と死」は仮題)
シナリオ 酒井あきよしさん 広川和之さん
コンテ 山室清二さん
39話コンテ担当の山室清二さん(バルディオスでは他にも多数のコンテを執筆)
は安納正美さんの別ペンネームと広川和之さんからお聞きしています。

コンテはHP開設前から譲り受けたもの
シナリオはかなり前に(2000年代前半頃?)
お持ちの方からご厚意で取らせていただいたコピーです。
一部 文字がつぶれて読みにくい箇所があります。
39話シナリオは小田原図書館の首藤剛志さん寄贈の小田原図書館 寄贈資料
に所蔵されているのでそちらで閲覧可能です。
コンテは私が入手したときから表紙がありませんでした。
又、シナリオとコンテでラストが違います。
シナリオのラストは私目線で言うとかなり残念入ってます。

コンテは打ち切り決定後に描かれたもの・・・と広川和之さんから伺ってます。

近代映画社のジ・アニメの副編集長から「バルディオス未放映特集」の依頼があり
その掲載に合わせて最終回に至る流れを広川さんが組み立て直したのだそうです。
ラストはコンテ担当の山室清二さんとの打ち合わせの際に
修正案を具体的な文章として渡していたので絵柄もイメージ通りになっていた

と広川和之さんから伺いました。
この「具体的な文章」と思われるテキストといのまたさんの39話清書コンテが
近代映画社 ジ・アニメ1981年3月号(1981年2月10日発売)に掲載されています。
このため、39話ラストはシナリオとコンテでラストが違います。

39話いのまたさん清書コンテはこのジ・アニメ1981年3月号が初掲載です。
(この清書コンテの出来が良かったので豪華本にも掲載した、と広川さんから伺っています)

広川和之さんは1977年放送の「無敵超人ザンボット3」最終回の演出も担当されています。
39話の地球に帰還するマリンはザンボット最終回の勝平を思わせます。
ジ・アニメ1981年3月号の広川さんのインタビューで

マリンは地球に帰ったのかもしれないし、もしかしたら大気圏でパルサバーンごと燃え尽き
死後の世界に行ったのかもしれない、または時空を飛び越えてはるか過去の地球に行ったのかもしれない、と三通りの解釈をされています。

広川さんもまた、富野喜幸さんに影響を受けたクリエイターのお一人で
ザンボットファン、富野さんの系譜に興味をお持ちの方にもお薦めです。


近代映画社 ジ・アニメ 1981年3月号
39話はこのラストもさることながら
放射能汚染から逃れ、シェルターで生き延びようとする人々の描写が胸を打ちます。
特に本編ではキャラ立ちがはっきりしなくてパッとしなかったメインキャラ
オリバーが自嘲気味につぶやくセリフ
「あ~ ただ生きるってだけの事がこんなに辛いとはな・・・・」
は刺さりました。

本当に・・・特別なことは望んでない、ただ生きるだけなのに、なんでこんなに辛いんだ・・
そんな思いにかられた経験はどなたにもあるのではないでしょうか。

未制作5話全体の構成として36話でアフロディアが死んで以降
基本、負け戦になってしまうので主役としてのマリンはあまり機能しなくなります。
そのため群像劇のウエイトが強まり脇に隠れていた雷太、オリバー、博士、ジェミーの
担うパートが増えていくんですね。
主役ではない普通の人々の生きる苦悩、あるか無いかの希望を見出す姿は胸を打ちます。

そして主人公のマリン。
懸命に・・・ただ懸命に生きただけなのに全てが裏目に出たあげく
宿敵ガットラ―にも敗れ、ヒーローとは言えません。
でも、全てを出し切って負けたのならもうそれでいいのではないか。
(地球的にはダメなんだろうけど)
せめてその姿は肯定してあげたい・・・

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(2022年1月)