1話「孤独の追跡者」 
ミラン殺害 凶器の変更から見る殺意の有無を検証します。
1話Bパート
軍部(アルデバロン)に研究室を襲撃され施設は大破。
職員を殺害され、マリンはとっさに瓦礫から鉄片をもぎ取り投げつけた所 ミラン(アフロディア弟)
の急所に突き刺さり即死させてしまいます。
マリンとアフロディアの愛憎劇を作り出す 物語の根幹に関る重要シーンです。


画像引用Pioneer DVD
宇宙戦士バルディオス1話「孤独の追跡者」 
葦プロダクション 著作

マリンは非武装で丸腰。
ミランに研究所職員を殺され
その場にあった鉄片をもぎ取り・・・

画像引用Pioneer DVD
宇宙戦士バルディオス1話「孤独の追跡者」 
葦プロダクション 著作
ミランに?ミランの方向に投げつけます。

よく見るとマリン 下手投げで投げている。
上手投げだと反撃 殺意。
下手投げだと威嚇で放り投げた印象になります。
コンテで「アンダースロー」と指示が入っています。 
 
画像引用Pioneer DVD
宇宙戦士バルディオス1話「孤独の追跡者」 
葦プロダクション 著作

なんという不幸・・・
リアルに考えたら即死はおかしいけど
頸動脈あたりなので死んでもおかしくない。

広川監督から
「この鉄片をアフロディアに所有させて 
後にアフロディアの心象を描くアイコンにしたかったけど出来なかった」
と伺っています。  

マリン、手痛そうだな とか
金属もぎ取るってすげー握力 なんて突っ込みどころはあるものの
ここは「その場にあった(瓦礫 準備していない)」が大事なポイントです。

物語上 マリンがミランを殺す必要があるのですが、ここに殺意を感じさせてはいけないと思います。
1話Aパートのマリンはレイガン博士(マリン父)に
アフロディアってば美人~♪と軽口を叩くような普通の好青年と描かれており
殺そうと思ってミランをやったのではキャラがぶれてしまいます。
あくまでも偶然。
故意(わざと)ではなく過失(つい うっかり)でないといけない。

1話のこのシーン 実はシナリオの段階では凶器は「短刀」となっています。
(現物は所有していないのですが 首藤剛志さんが小田原市立図書館に寄贈した資料の中に
バルディオス1話のシナリオもあり閲覧したことがあります)

ト書きには(重要な所だけ写してきました)

「そのスキをねらって銃を拾いなおしたミランがマリンを撃つが 
身をひるがえしたマリンの短刀がグサッとミランをつき刺してる」

とあり、リアル刑事事件で言うところの揉みあっていたら(うっかり)刺してしまった
正当防衛 を表現したかったのだと思います。

ニュースやドラマで見る殺意の認定って凶器の種類や所持も争点になりますよね?
ト書きを見る限りこの短刀 マリンが所持してたかは不明ですが
そもそも殺傷能力のある武器ではダメだと思います。
短刀が刺さってしまうだけの間合いに2人がいる位置関係も良くないです。
(この時期のアニメの作画 演出でこの距離感にいる加害 被害の「うっかり」を分からせるのも難しいかと)

1話のコンテ、演出は広川和之さんなのですがここら辺を修正したくて
現行の描き方にされたのだと思います。
(コンテの段階で鉄片がささる に変更されています)

さらに細かく説明すると研究室に入ったマリンは鉄片を投げる前に
モブ兵士から一度、長銃を奪っているのに
手近なモブ兵士を殴りつけた後 その銃を捨てているんです。
(マリンが銃を捨てたと分かる金属音が、効果音で入る)
再び丸腰になったマリンがレイガン博士を連れて逃げようとしていた所に
ミランが銃口を向け一緒にいた職員を殺したので鉄片をもぎ取る一連の行動に出たのです。
マリンに戦意はなく正当防衛 アクシデントであると何度も強調されています。

ちなみにシナリオだとレイガン博士を殺害したのもミランになっています。
これだと父親を殺されてカッとなった と動機もばっちり。
「互いに仇同士」の関係は分かりやすくなりますが
マリンの憎しみの対象がミランやアフロディア個人となってしまいかねない表現です。

TV版だとレイガン博士は襲撃当初、ミランに殴られ倒れこんでいますが撃たれてはいません。
ミランの死後 瓦礫の下敷きになって負傷 その後、致命傷を与えたのはモブの兵士で
ことレイガン殺害に関してはミランは直接 手を下してないのです。
これはマリンとアフロディアの互いに対する憎しみの温度差となってシリーズ全体に反映されていきます。
ここら辺は次に解説します。

 
画像引用Pioneer DVD
宇宙戦士バルディオス1話「孤独の追跡者」 
葦プロダクション 著作

ミラン殺害直後のマリン。
コンテのト書きには「初めて人を殺したマリンです ゼイゼイと息づかい」
とあり ついうっかり 勢いに任せて人を殺めてしまったマリンの後悔と動揺が伝わってきます。
反撃してやったゼイ!のような好戦的な態度は見られません。
一連のシーン 作画は斎藤格さんです(多分)  
バルディオスは40年も前のB級アニメ(お前が言うな)
せっかくの劇場版もコマ切れで共に評価は高くありません。
でもでも!
随所にこのようなきめ細かい演出が施された良作なんです。
羽田健太郎さんの音楽はじめ、声優さんの演技も素晴らしいので
作業用やBGM代わりに音だけ楽しむのもアリだと思います。


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(2021年10月)