バルディオス チャージオフ!(劇場版)
「バルディオス チャージオフ」
これは映画の終盤でマリンが単身、ガットラ―と対決するために
バルディオスを3機に分離した時の掛け声です。
前回「マリンは何人?」でも触れた所ですね。
合体が「チャージアップ」分離が「チャージオフ」ってわけです。
アップの反対はオフなのか?と突っ込みたくもなりますが
「チャージオフ」の文言はTVでも使ってるのでTV由来です。

TVシリーズで戦闘中の分離は無かったので絵的にも珍しいですね。
そしてこの分離シーン、よく見るとちょっと変なのです。


画像引用Pioneer DVD
劇場版「宇宙戦士バルディオス」
葦プロダクション 著作
マリンのかけ声
「バルディオス チャージオフ」
と共に3機に強制分離 

パルサバーン(胴体)
キャタレンジャー
  (左足)
バルディプライズ
    (右足)

           
 
画像引用Pioneer DVD
劇場版「宇宙戦士バルディオス」
葦プロダクション 著作
胴体はパルサバーンに復帰

キャタレンジャー(左足)
バルディプライズ(右足)は
各機に復帰せず両機が合体
 
画像引用Pioneer DVD
劇場版「宇宙戦士バルディオス」
葦プロダクション 著作
キャタレンジャー
バルディプライズが合体
最終形態は3機ではなく2機に分離。

キャタプライズ?
バルディレンジャー?
となり飛び立っていく

作画ミス?
合体から分離はTVシリーズに無かったので新設定し間違えた?
とか思いましたが よくよく考えるとそうじゃないんです。

マリン達はBFS基地で最終決戦に向かうのですが
敵要塞アルゴルを前にして月影率いるBFS基地と
クインシュタイン博士率いるバルディオスと二手に分かれるんですね。
(その後BFS基地はアルゴルに突っ込み撃沈)

通常態勢でのバルディオスは各コックピットに3人が分乗しています。
それぞれの操縦席に座って「パルサーベル!」
とか叫んじゃう例のあれで、前半の戦闘シーンはこのスタイルになっています。

それがこのラストの戦闘シーンではコックピットではなく指令室?
みたいな広めの空間に博士、ジェミー、マリン、雷太、オリバーと5人一緒に居るんです。
ヤマトで言う第一艦橋みたいな感じです。

これはTVには無いレイアウトです。
各コックピットに分乗だと博士とジェミーはどこに乗せるのか問題が発生するし
博士にもヘルメット着用?とか
(通常の戦闘シーンのバルチームはヘルメット着用がデフォ)
会話シーンでその度にカットを割らなきゃいけないので5人一緒にさせたんだと思います。
最後の戦いなので同じ場に居る事で一体感も出したかったのかも?

で、チャージオフで3機に分離した後も残った4人が同じ空間に居るんです。

 
画像引用Pioneer DVD
劇場版「宇宙戦士バルディオス」
葦プロダクション 著作
チャージオフ後のマリンに
「戻ってこい」と呼びかけるシーンです。

オリバーの作画 ヤバイ・・・
輪郭、髪形、鼻の形
オリバーは描きにくいやね(涙)

通常通り3機に分離だと、この4人はバルディプライズ、キャタレンジャーのどちらかに居て
残る1機は無人でリモート操縦・・・って事になっちゃいますよね。
1981年頃の実際の戦闘機がどうだったのかは分からないけど
アニメだとまだまだ有人飛行のイメージですよ。
そこら辺考慮しての変形分離だったのだと分かります。

この辺り 展開が早くて目まぐるしいのでDVDで見返すまで気が付きませんでした。
時間にしてもほんの一瞬ですよ。
当時は公開が終わってしまえば見返すことも難しかったので
気付いた方は少なかったのではないかと思います。
(当時の商品では映画の画面をマンガにしたワクワク・フィルム・コミックスでのみ確認できる)

どっちを取るか?ですよね。
3機から合体したのだから3機に分離、の様式美を取るか
前後の画面の整合性を取るか。
当時のアニメ雑誌を見返してみたところ、
このシーンについて映画演出の広川和之さんが言及してました。

徳間書店アニメージュ 1981年12月号

「バルディオスの合体システムに変更は?」の問いに対して

「テレビと同じで変更はありません。
ただパルサバーンが離れたあとの2大メカだけの新合体が出てきます。
そのままだと、ちょっとみっともないんです。
これは1カットだけですから注意して見てください。

この記事、当時も読んでたはずだけど見返すまで気が付かなかったー

リンクさせて頂いてるブログ「私達の未来は何処に?」さんの
2011年10月2日 劇場版宇宙戦士バルディオス 原画担当表
を見ると、このチャージオフのカット C-589は亀垣一さんの担当になっています。
(そこから先に他の人に振り分けてる可能性もあるそうですが)

変形チャージオフが意図的なのは分かったけど、
これはどこからの指示なのかな??
映画のシナリオは持ってるんですが、シナリオの段階ではそこまで練られてないです。

劇場版 
宇宙戦士バルディオス
シナリオ
制作
東映セントラル
葦プロダクション
国際映画社

葦プロ系アニメショップ
あいどるの商品

ト書きには
「忽ち 分離してパルサバーンは飛び立って行く」
とあるだけです。

この辺りのコンテは持ってないんですが
ケイブンシャの「映画版 宇宙戦士バルディオス大百科」と
サンケイ出版の「ワクワク・フィルム・アルバム5 映画版宇宙戦士バルディオス」
にはアフレコ台本が全て掲載されてます。
サンケイ出版の方はちょっと見にくいのでケイブンシャの方を見てみましょう。




ケイブンシャの大百科104
映画版
宇宙戦士バルディオス大百科






「バルディオス 
三台の分離はパルサバーンに変化、二台は合体して別の形になるように設定してください」

って指示があるやないの!
アフレコ台本にこのように書かれてるってことはコンテの段階で指示があった?
と考えていいのかしら。
ここは映画の新作カットで、新作カットのコンテは全て鳥海監督。
やるじゃん、鳥海さん!!
で、具体的に絵にした(設定した)のが原画の亀垣さん?

ここ、ホントに一瞬で、なかなか気が付かないと思うんですよ。
お話全体に影響を及ぼす物では無いし
ぶっちゃけ、この新合体が凄くカッコイイわけでもないと思います。
(2機が合体するプロセスは良いんだけど最終形態がデザイン的に・・・
元のデザインを外さずにムリクリ1機にしたからなんだけど)

でもこの短いカットにクリエイターの矜持を見た気がするんです。
だってパルサバーンだけフォローしてバルディプライズとキャタレンジャーの2機は
画面から外しちゃえば枚数もかからないし楽じゃないですか。
観客はフツーに3機に分離したのかな?って脳内補完するから
残った4人はどっちに乗ってるんだ?問題は残るけど、マリンとの会話が終わると
もう最後まで登場しないのであまり気にならない・・かもですよ?

劇場版バルディオスって「あれ?ここどうなってんの?おかしいじゃん??」
って観客を置いてけぼりにしてる所がいっぱいあると思うんです。
でもここはきっちり描いてカタを着けた。
一つ前のコラムで映画をボロクソにけなしてしまって、その気持ちに嘘はないのですが
自分の言葉を持ち出すなら、
大人の事情、関係ない所だから真摯に作品に寄り添ってくれたんですね、有難う!
です。

映画は動くお金の多い分、制約の多い苦しいお仕事だったのではないかと思います。
申し訳ないけど1本の映画としての出来も良くない。
でもその中でこのカットや、いのまたさんのイラスト等
それぞれの立場で最善を尽くしたのだ、と分かるシーンも多いです。
せっかくの劇場版です。
そんな所を拾って見ていけばいいのだとも思うのです。


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(2021年12月)