36話「アフロディアに花束を(後)」シナリオコピー 4

ではBパート(仮)の豪華本あらすじはどうなっているか。

ガットラーはネグロスにアフロディアの生きたままの捕獲を命ずる。
だがネグロスは独断で処刑を決断

アフロディアはジェミー、マリンを人質に取り通信室に立てこもる。 
葦プロダクション
「宇宙戦士バルディオス」
いのまたさんっぽい??(ジェミーの足とか)


アフロディアはガットラーへBFS基地の位置を通信する。
だが傍に居たジェミーはその情報は偽だと解った。

この辺のディティールがシナリオと違うんですね。
今の感覚だと通信入れた時点で現在地の特定が出来てしまいますが
制作は1980~81年なのでスルーでお願いします。

アフロディア、ジェミーを開放しアフロカーでBFS基地を脱走。
後を追う雷太、オリバー。
徳間書店アニメージュ
1981年4月号
葦プロダクション
「宇宙戦士バルディオス」
これは謎カット。
通信室のアフロはジェミーだけでなくマリンも人質に取ってるんですが、マリンに銃を突きつけるのは?
な気もします。
豪華本あらすじによるとこの後マリンは
肩の傷で失神するようなので
(その隙をついてアフロは脱走)
その前後?または
イメージカット?
脱走前の見せ場的にこんなカットも作ってみたとか?


偽通信の場所に出撃したネグロスだったがそこに基地は無く
単身アフロディア(アフロカー)が待ち受けていた。
いっせいにアフロディアを攻撃するアルデバロン軍団。

アルデバロンの同士討ちをほくそ笑む雷太とオリバーは
意識を取り戻し、駆けつけたマリン(ジェミーから真相を聞いていた)
に説得され不承不承アフロディアの援護に回る。
バルディオスチャージアップ。
バルディオスの出現に散っていくアルデバロン軍。
だがアフロカーは火を噴き急降下、追うパルサバーン
 葦プロダクション「宇宙戦士バルディオス」
徳間書店アニメージュ1981年4月号
みのり書房月刊アウト1982年1月号
徳間書店ロマンアルバムデラックス
「宇宙戦士バルディオス」
 
葦プロダクション
「宇宙戦士バルディオス」
いのまたさんのカラーコンテ

以下同じ
いのまたさんのカラーコンテは
一番上C-344?
火を吹くアフロカー
から始まります。

図版の該当カットは
C-345~C347

 
徳間書店ロマンアルバムデラックス
「宇宙戦士バルディオス」
 図版のほうは反転してますが
ここが該当カットかと
C-350
マリンなめ 降下する
浜辺に不時着したボロボロの機体には傷ついたアフロディアの姿が・・・

みのり書房月刊アウト1982年1月号

これも謎カットなんですが
彩色ミスで本来なら赤系統で彩色
アフロカーだと思うと納得。



 C-355

葦プロダクション「宇宙戦士バルディオス」 

 C-356
かけてくるマリン
死を悟ったアフロディアは自らの非を認め許しを請う。
分かり合えた2人だったが、つかの間の安らぎの後アフロディアは息を引き取る。

号泣するマリン。
マリンはまた一つ、大切な物を失ってしまう。
 

葦プロダクション「宇宙戦士バルディオス」
 
 C-366
手を差し出すアフロ
 
葦プロダクション「宇宙戦士バルディオス」
徳間書店アニメージュ1981年4月号
 


葦プロダクション
「宇宙戦士バルディオス」
徳間書店
ロマンアルバムデラックス
「宇宙戦士バルディオス」

 

葦プロダクション
「宇宙戦士バルディオス」



一方のアルゴル、ネグロスからアフロディア死亡の報を受けたガットラーが
一人悲しみに沈んでいるのだった。








以上が豪華本あらすじです。
いのまたさんのカラーコンテ、ラストを抜粋してみましたが
← やはりマリンには号泣して欲しい。

マリンって一回こっきりのゲストが死んでも涙するキャラなんですよ。
(5話アラン>アランは本当は死んでなかったけど
19話クラン博士等々)

泣けない時の方が実は悲しいのは解ってますけど
シナリオのマリンが泣けないほど悲しんでたようにも思えないです。
(自分で撃ってるし悲しむよりも決着付いてほっとしてる感じだよね。)
任務とは言えあっさりアフロを撃ってしまうのも違和感です。

アフロディアもあらすじの方は具体的なセリフは載ってないので
私が受けた印象でしかないのですが
言葉よりも態度で、自らの人生に決着を付けようとしていて潔く美しいです。
(シナリオのアフロは悪態ついたりマリンに唾吐いたり色々見苦しい・・・)
マリンはアフロ殺害の重荷を背負わずに、純粋にその死を悼む姿に
アフロも人間に戻って死ねたので救いのある終わり方になりました。

35話からの繋がりにおいても豪華本あらすじ(コンテで改定)
はキャラにぶれがない&
内容に無理が無く、よりドラマティックに美しくなっていると思います。


豪華本を初めて見た中学の時は、アフロディアの死がただただ悲しく、マリンが可哀想で
これを放送で見たかった、打ち切りバカバカって素直に思いました。
でもさすがに年を取ると、ちょっとこれは綺麗過ぎる?とも考えるようになりました。

例えば↑上のCー345血のような夕陽。
いのまたさんコンテはここで終わっているのでここが36話のラストのように思えますが
豪華本あらすじを見ると、この後にアフロの死を嘆くガットラーのカットが入るようです。
(前後の繋がりを考えたら入れるのはアフロの死が確定したこの後だよね?)
最後の美味しい所をガットラーに持っていかれたら全体の印象はかなり変わるけど
いのまたさんコンテはそこまで描かれていません。

やはりこれは映像ではなくコンテだから。
そしてそのコンテは35話のようにフィルム化を前提とした完成品の清書ではなく
「こんな風に作りたかった」を部分的にチョイスして描かれた物だから限界が出てしまうのは仕方が無い。
そんな風に思い至るようになりました。

フィクションだからその意味で全部嘘なんだけど、その嘘をいかに美しくつき通し巻き込めるか。
全体のリアリティとか世界観ってそこら辺がキモって言うかそれが演出ですよね。
打ち切りになってしまったから表現媒体として紙を、手段としてコンテを使った。
1981年当時としてこれ以上はどうしようもないと思います。
その中で稀代の才能を持ついのまたさんが最大限に美しく仕上げてくれた。
必ずしもこれがフィルムになったわけではないだろうけど
私は豪華本あらすじやいのまたさんコンテに満足して心を動かされ続けています。

この36話のいのまたさんコンテは2018年7月、2019年2月のいのまたむつみ展に
展示されていたので原画をご覧になった方も多いと思います。
私はちょっとご縁があっていのまた展より前に間近で拝見する機会があったのですがホントにホントに綺麗で~
しかも下絵の跡がなく一発描きだったんです。
その場には広川さんもいらっしゃって見て頂いたのですが
「下絵なしで、ぱ~っと、さらさら~って描いちゃうんだよ」っておっしゃったのを覚えています。

広川さんからは別の機会にこんな話も伺っています。

「 「監督」という名前に負けていたが最後に巻き返しを図ったきっかけの作品。
冷凍睡眠刑に処された青年が覚醒させられるのも、敵の将軍が実は双子だったりしているのも、
その「巻き返し」のほんの一部だった。
同時期に放映されていたガンダムほどでないにしろ、もう少しインテリジェンスのある作品にしたかった。」

打ち切りになっていなければいのまたさんのコンテがそのままフィルムになっていたのか
って言ったらそうでもないと思います。
逆に36話、シナリオそのままに変更しなければスケジュール的にコンテは完成しててもおかしくないんです。
そしたら打ち切りになった時にそれをいのまたさんが清書?
未制作分、アフロディアの死という最大の見せ場はどんなだったかと
期待して豪華本開いた私らファンはシナリオの展開で納得できたのでしょうか。

限られた条件の中で精一杯の物を出してくれたのだと思っています。
そこに嘘はない。

余談ですが豪華本の塩沢兼人さんとの対談の中でアフロディア役の神保なおみさんは

「死ぬシーンはぜひやりたかった」
「アフロディアとしても、ああいうかたちで終わってしまったのは、死んでしまうより悲惨よね。それだけが心残り」

とおっしゃっています。


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(2019年8月)