2007年6月2日、バルディオスの音楽を担当された羽田健太郎(はねだ けんたろう)さんが永眠されました。
バルディオスファンにとって塩沢兼人さんがそうであるように羽田さんもまた、特別な存在でした。

私は本放送以来の筋金入りのファンですが高校を卒業する時に転機がありました。
TVの再放送は望めないし映画は今ひとつだし、周囲に話せる友達もいなくて
なんかもう、これ以上好きでいることが馬鹿らしくなってきちゃったんです。
永遠に片思いをしているみたいで苦しくなっちゃって
もう辞めようって山ほどあったコレクションも全部処分してしまいました。

それでもどうしても捨てられなかった物が2つ、豪華本とレコードです。
こんなに好きだった思い出にこれだけはとっておこうってそう思いました。
豪華本は本として、レコードは音楽としてあまりに素晴らしかったので捨ててしまうのは人として間違ってるとも思いました。

そんなわけでこれからご紹介するレコードは私にとって数少ないワンオーナー物。
思い出の詰まった大切な品物です。

TV版のOP,EDが入ったシングルレコードです。
本放送の放映中に買いました。
初めて買ったバルディオスの商品、600円でした。

ジャケットは見開きになってまして、開いてみると
それはそれは素晴らしいイラストが載っています・・・
載せようかとも思ったのですがお笑いのページになってしまう恐れがあるので止めました。
それくらいスゴイんです。

絵の話はこれくらいにして・・・
私はロボットアニメと言うものにアレルギーがあって
それまで一度も見たことがありませんでした。

なにやら異形の人が攻めてきて、困っちゃうんだけど
○○ロボのおかげで救われた!
まともに話があるのって最初と最後だけで後は
いつ見てもドンパチやってるだけの紋切り型のストーリー。
主役ロボが活躍してもカッコイイともなんとも思えなかったし
「ロボットアニメなんて子供の見るもの」って
バカにしてたんですよ。 ←お前も子供じゃ!
(ファンの方、ごめんなさいね。大昔の個人的意見なので勘弁して)

それがなぜロボットアニメのバルディオスを見るようになったか?って言うと
要するに時間調整。
関東では月曜夜6:45〜7:15放映でして、7時からの「ルパン3世」が始まるまでの15分だけ、これ(バルディオス)見て時間つぶすかなーって
そう思って見始めたんですよ。

そんな感じでまったく期待せず、何も考えずに見た1話だったのですが
意外や意外、すっげー面白いでやんの!!
結局7時になってもチャンネルを変えず、最後まで見続けました。
だって面白かったんだもん。
これって本当にロボットアニメ??
ロボット出てこないじゃん。

バルディオスがロボットアニメっぽく思えなかったのは主役ロボがいつまでも出てこない展開もそうだったんだけど
主題歌も今までのロボットアニメと違ってて良かったんですよ、無駄に勇ましくなくて。
〜戦え○○〜行け行け○○〜♪ みたいなのは生意気盛りだった当時の私には本当についていけない世界でした。
反してバルディオスはイントロでハープが流れちゃうんですよ!!
歌詞も「地球を守る」って言葉は出てくるけどその次に「祈りで満ちれば」って来るんですよ!
なんて綺麗な歌詞だろうって思いましたよ、13歳の私は。

EDも凄かったですねー。ここを読んでるような方々はバルディオスのEDってどんな曲か知ってますよね。
演歌っすよ、演歌。何コレ!?凄い、凄すぎるっ!
変といえばこれ以上ないくらい変なのにどこか惹かれてしまう不思議な曲調。
どしーんと重いお話の後に続いてEDを聞くと、もうこの歌しか考えられないほど、ぴったりとはまっててこれまた好きになってしまいました。

この歌の続きが聞きたいな、2番はどんななんだろう。
バルディオスっていいよ、面白いよ!友達にそう言っても誰も聞く耳持ってくれなかったのですが
アニメ雑誌で主題歌のシングルレコードとサントラが出ていることを知った私は「これ買う!!」と決意したのでありました。




次に買ったバルディオス商品、TVのサントラLP 2200円。

600円のシングルレコードか2200円のサントラか。
ちなみに当時のお小遣いが月に1000円。600円ならなんとかなるけど、2200円は大金だったんです。
ホントはLPが欲しかった。とりあえず主題歌が気になったけど、他の音楽も聞きたかったし、あとジャケットがね〜
シングルの方はいかにも「ロボット物」って感じだけどLPはなんだか大人っぽくって素敵じゃない・・・
つーかLPでマリンと並んでるのって誰よ!?

当時の私は#22「特攻メカ ブロイラーの挑戦」で私服姿のアフロディアを見るまでEDでマリンと手をつないでるのが
アフロディアだと気付かなかったくらいでして(汗)このサントラの女性も誰なのかわからなかった。
もしかしてアフロディア??でもこの人、敵だし、マリンの仇だし。
先の読めないストーリー展開のように謎めいたLPが欲しかったけど、とりあえず目先の金が惜しくてシングルを買いました。


そしたらーーーーーーーーー
やっぱ、いい!!バルディオスの音楽っていい!!
サントラも買いますっ!買わせて下さいっ!お金はなんとかしますぅ〜〜〜〜〜〜〜〜
(挿入歌のシングルレコードも出てたんですけど、LP買っちゃったんでそっちは買いませんでした)

サントラを聞くようになるとやはり作曲者が気になってくる。羽田健太郎さんかぁ。
この頃羽田さんについてどの程度知識があったかは覚えてません。
「戦国自衛隊」「復活の日」の作曲者でドラマティックな曲を作る人・・・その程度には知っていたのか、どうだか。
(アニメだと羽田さんにとってバルディオスの前作「宝島」は見ていませんでした)

バルディオスのサントラもドラマティックなんだけど、無駄に自己主張しない曲だなあーって思いました。
あくまでも劇判として画面を盛り立てる役に徹している、なのに、単独で曲として聞いても素晴らしいの。
実際、何度音楽に助けられた事かっ!
いや、別に私が個人的に助けてもらったとかじゃなくって、アレですよ、バルディオスは絵が時々モンノスゴイですよね?
敵メカも子供の落書きですか!?つーのが時々出てくるのですが、バックに流れる音楽のおかげで
見てるこっちも救われた、つーか、緊迫感が出てきて画面を押し上げてくれました。

戦闘シーンで流れる曲がまた、変に勇ましくなくて良かったですよ。
なんかお洒落でカッコイイの!!
曲名で言うと「脱走と追跡のサンバ」「異星人ゴーホーム」あたりかな。「大苦戦」も良かったよなー
この細かい曲の名前は広川監督がつけられたんですよね。

このネーミングがまた素敵でしたねー
当時番組テロップだとキャストくらいしか気にしてなかったのですがサントラを買ってからは
羽田さん(作曲)保富さん(作詞)広川さん(監督)、と気になるお名前が増えました。
そうかー、この素晴らしい世界を作ったのは(他にもたくさんいらっしゃるのだが、とりあえず)この3人か、って。


そうこうするうちにTVは打ち切り。
製作元の葦プロダクションからムック本
「宇宙戦士バルディオス」が発行されました。
(通称「豪華本」)

一般の書店ルートには乗らない
完全な自主制作。
少数部数のため、またもや
中学生の身には痛い定価6500円でしたが
これも迷った末に購入。
そして中身はまたもや予想を大きく裏切って素晴らしいできばえでした。

これはその中の羽田さんのコメント。
TVのサントラにもコメントは掲載されていたのですが
写真は載っていなかったので
お顔を拝見したのはこの時が初めてでした。




これはバルディオスとは直接関係ないんですが
当時のアニメ雑誌
秋田書店「マイアニメ」1981年8月号の記事です。

映画やアニメの音楽って、当たり前だけど
映像が出来上がる前に作曲するわけですよね。
ある程度のイメージや方針なんかは打ち合わせするんだろうけど
それにしても、どうしてこんなにピッタリした素晴らしい曲が
作れるのだろう??と思っていたので、面白い記事でした。
いわく


(前略)
「アニメーションの音楽の仕事をやるようになったのは、やりたいというのではなく、いつの間にか仕事を受けていたという、そんなもので、はっきりしたキッカケというのはありませんね。

手がけた作品には
”サンリオ”の人形アニメ「くるみ割り人形」
「宝島」「ムーの白鯨」「宇宙戦士バルディオス」
それから、最近では「夏への扉」などがあります。

こういったアニメ作品の作曲の場合、仕事が入ってくると、まず原作を読んで、絵コンテを見て、各キャラクターを見て、そして細部のイメージを考え、作曲に移るというのがほとんどです。
その過程では、やはり、ストーリー展開と絵のイメージには特に注意して作曲します。
この辺の注意をすれば、でき上がったものと作品とはイメージ的にはほとんど違いありませんね。
(後略)



私はこの記事を読んでちょっと・・ううん、かなり感動しました。

こんなこと言ったらすっげー失礼なんですが
もうちょっとアバウトに作ってるのかな?って思っていたからです。
アバウトって言うと言葉が悪いか。
こんなに丁寧にな作り方をしているとは考えていなかったんです。

あー、そうなんだー
コンテまで見てるんだー
OPのコンテは曲が出来てないと作れないから
1話とか2話とか、かな?
1話と2話のコンテ切ったのは広川監督だし
監督は羽田さんのファンだったそうだから
色々とご自分の思いを伝えたのかもしれない。

物を作るってすごいなー
何も無いところから、紙とペンだけでこんな素晴らしい物を
作り上げてしまうんだーーー
そういう情熱っていったいどこから来るんだろう。
すごいな、すごいな。




打ち切りから急転直下!
なんと映画化が決まりました。


羽田さんはやはり音楽担当だったのですが
主題歌はチューリップを脱退した上田雅利さんが結成したバンド
「TONY(トニー)」が担当する事になりました。
で、これがしそのシングルレコード、700円。 ←値上がりしてる

映画のサントラも発売される予定だったのですが
この頃は「バルディオスのものは全て買う」つースタンスでしたので
当然のように買いました。
ちょっと大上段に構えすぎてる気もするけど切ない、綺麗な歌です。
どちらかと言うとラストに流れる主題歌の「素顔のままで」より
冒頭に流れる「Sea Wind」の方が好きですね。
アニメを見なくなってからもこの曲はテープに紛れ込ませて聞いてました。


TONYは82年に解散してしまいましたが、リーダーの上田雅利さんは
現在でも音楽活動を続けていらっしゃいます。
ググると出てきますよ。
こちらはTVと同じ羽田・保富コンビが作った挿入歌。
主演の戸田恵子さん歌っています。やっぱり700円。

劇中に流れるのはA面の「思い出ブルードリーム」だけです。
シングルレコードのB面って結構、そういう位置って言うか
扱い的に重要じゃなかったですよね〜
CDになってからはA面B面の格差が無くなったのは
やはりレコードをひっくり返すのがめんどくさかったからなんでしょうか。
懐かしい。

ちなみにTONYの主題歌発売は1981年11月21日。
こちらの挿入歌は12月5日発売。
映画の公開が同年12月19日なので今、考えると結構ギリギリ。
私的には映画は楽しみにしていた半面、不安もあったので
この挿入歌に関しても微妙です。


映画のサントラLP 映画公開日と同じ1981年12月19日発売。2500円

公開初日に見に行った肝心の映画は、私が期待していたものとは大きく路線が違っていました。
映画を好きな方も大勢いらっしゃると思いますが、私は今でもあまり好きではありません。

ちょっと・・・いや、かなり肩透かしを食らったのですが、それでも音楽は文句なしに素晴らしかった!
TV版と根底に流れるものは同じなのですが、スクリーンを意識した奥行きのある音で
聞くと「ああ、これは映画音楽なんだな」ってすぐわかるような作りです。

一つだけ残念なのが劇中で1,2を争うくらい好きな曲が入っていなかったこと・・かな。
ラストシーンに流れる前記の「思い出ブルー・ドリーム」のピアノソロがその曲です。
(パルサバーンが地球を目指すシーンで流れるピアノアレンジではなく、アフロが絶命するシーンのピアノソロの方 ←細かい!)

ちょっと話が戻るのですが先ほどこの歌の事を「微妙」と言いましたよね。
私と同じように映画を好きになれない方の代表的な意見として「(TV版との)キャストの大幅変更」がありまして
新しくキャスティングされた戸田さんの歌う挿入歌はその象徴のようにも思えて馴染めなかったんです。
それなのにどうしてピアノになるとこんなに切なく響くんだろう・・・

私は映画はホントにダメで(好きな方、度々の失礼ごめんなさいね)何回見ても感情移入できなくて
「あほくせー」とか思いながら見ちゃうことすらあるのですが、それでもこのピアノソロが流れる場面では何度かこぼしました。
キャストが変わったとか、あそこが不満とかそんな風に、目くらましで見えなくなってしまっていた物が一気に伝わってくるからなのかもしれません。
誰かを好きになってしまうのはこんなにキリキリ切なくて痛くて苦しい・・・
音楽ってすごいな。羽田さん、バルディオスの音楽を作ってくださってありがとう!!

この曲が入ってないのは本当に残念。
歌とかぶるから入れなかったのかなー。
最後まで悩ましい1枚です。

長々書き連ねてきましたが、これが最後。映画のドラマ編、2枚組LP 4500円。
発売は映画の公開後だったと思います。

あれだけ文句言ってるのにやっぱり買ってしまうのはマニアだから。
ドラマ編レコードって言うのは、今じゃ想像出来ないかもしれませんが、画像は無くて音声だけのレコードなんです。
実写映画だったらまず考えられない商品っすよねー
だって「音だけ」なんだもん。
声優ブームってのもありましたし(今もそうか)それだけ音が重要視されてた、って事でしょう。
(その重要な音=キャストを全とっかえしちゃうんだもんなー ある意味すげーよ >26年前のことをいまだに文句言うバカ)

いやいや、どーもスンマセン・・・(汗)
でもね、逆に音だけ聞いてるとバランス取れてていいのキャスティングだなーとも思うんですよ。
音楽の良さもストレートに伝わってきますし、いまでもたま〜に聞きます。
だって例のピアノソロ、こっちじゃないと聞けませんからねー


1984年、高校2年生のとき新聞の訃報欄で作詞を担当された保富康午(ほとみ こうご)さんが亡くなったことを知りました。
会った事も無い、話をしたことも当然無い、本やレコード、雑誌を通してしか知らなかった方だけど
バルディオスに関わった方が亡くなられたことがとても悲しかったです。
(代表作に「バルディオス」の名前が出てこないのも当然と言えば当然だけど悲しかった)

大好きなバルディオスを作った製作者の方は私には雲の上の憧れの人です。神様です。
その神様たちが、もう何人かすでに他界されました。
そのことがとても悲しい。

羽田さんへの追悼のぺージを作るつもりだったけど、私が一番言いたいのは多分これです。
どうかいつまでもお元気でいてください。
心からのお願いです。

著作権を侵害する意図はありません。クレームには対応(削除)いたしますので法的処置をとられる前にご連絡ください

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2007年6月6日