近代映画社 ジ・アニメ
1981年3月号 VOL.17
定価600円
現在は休刊

「遂に終了!!
さらば宇宙戦士バルディオス」
のタイトルで
カラー7ページの特集が組まれています

特集記事の表紙です。
左下の説明文を引用すると

「1980年1月25日(日)早朝(東京地方のみ)
「宇宙戦士バルディオス」は地球破滅への予感を残しながら終了した。
だが実は、これは最初に予定された最終回ではなく、
いろいろな事情により、急遽決まった”仮の最終回”だった。
そこで我がジ・アニメは読者の希望に答えるべく、未放映のままに終わってしまった7本
(31話、33話から39話)
の内容をダイジェストしながらできるだけ詳しく、皆さんに伝えようと、
製作会社の葦プロダクションをたずね徹底取材。
そしてここに未公開部分の貴重な資料を一挙公開。
君は満足いったかな・・・・。

(引用した本文の1980年1月25日(日)はおそらく誤植。
実際の最終回放送日は1981年1月25日(日)です)

とあります。
最終回は1981年1月25日放送。
雑誌発売は1981年2月10日。
最も早くバルディオスの打ち切りを特集した商業誌です。
(ちなみに豪華本は81年4月発売)

バルディオスはTV放送中はアニメ雑誌に取り上げられることがほとんどありませんでした。
当時一番売れていたアニメージュにいたっては
その月放送される全てのアニメ番組の放送スケジュールを掲載している
「テレビアニメーションワールド」というコーナーに
バルディオスだけ載らない
(1話〜11話の放送スケジュールは載っていません。12話から突然載るようになりました)
と言う異常事態まで発生していました。

プロダクションに通ったり有志で情報交換をしていた濃いファンと違い
フツーのアニメファンにとって唯一の情報源がアニメ雑誌でした。
1月いっぱいで打ち切られることなど当然掲載されておらず
(月刊誌なのでスケジュール的に無理)
突然放送が終わってボーゼンとしてた私は
後発誌のジ・アニメとはいえ、カラー7ページという大きな扱いでバルディオスが取り上げられたことに
そしてまた、内容の濃さに二重、三重に驚きました。
雑誌なので文字と画像だけだけど、根底に流れてるものはTV版バルディオスとまったく同じだったからです。
未放映分、特に最終回の一種、文学的な姿勢にもやられました。
泣きました。
大好きなバルディオスが帰ってきた!!!

私がこの記事に感激したように、制作側の広川監督にとっても思い入れのある
特別なものだったと近年になって伺うことが出来ました。
以下に当時の背景も交えて語らせてください。
(広川さん以外の関係者の方への事実確認はしておりません)



ジ・アニメは「アニメージュ」(発売日はともに毎月10日)の後発誌。
私は当時中1だったんですが、アニメージュとジ・アニメと2冊買うのは無理で
回りもほぼそんな感じ。
ぶっちゃけ後発のジ・アニメは苦しい立場にあったようです。

ジ・アニメはバルディオス放送中に唯一、特集記事を組んでくれたアニメ雑誌でもあり
アニメージュにはない独自の路線を・・・と思ったのかどうだかは不明ですが
放映中止が決まった頃にジ・アニメの当時の副編集長が「未放映分の特集をぜひ」
と葦プロに願い出て決まった企画だったそうです。

打ち切りが決まり言いようのない脱力感に身を任せていた時期だったそうですが
広川監督が自ら指揮を取り、打ち切りによって未消化のままだったご自分の思いを乗せて
編集にあたったそうで
フィルムのコマ出しやいのまたむつみさんにコンテのカラー清書指示を出すなど
7P分の構成を引き受け、自分でも納得のいく仕上がりにすることができたそうです。

またこの記事を編集するに当たって

「本来の最終回に至る流れを「自分で」組み立て直す事が出来、
特に最終回のラストシーンは絵コンテの打ち合わせをするときに修正案を具体的な文章として渡していて、
絵柄のイメージも含めてほぼ思い通りになっていった」

「「全人類が死滅する」ほどの放射能・・・・
本来パルサバーンから出た段階で即死状態だと思う。
だから、少し疑い深い視聴者には、既に冥界に入っていったのだな、と誤解してもらえるようにしたかった」

「この記事には私のバルディオスに対する想いのほとんどが詰まっています」

とも伺いました。


39話(打ち切り未放映になった本来のTV版最終回)のシナリオとコンテ
(どちらもオリジナルを所有してます)
ではラストのニュアンスがかなり違うのですが、おそらく打ち切りが決まった時点では
シナリオは出来ていたけどコンテまで進んでいなかったのだと思います。

アニメ放送ではないにしても発表のあてがあるのと無いのでは
喚起する物も違うのではないでしょうか。
39話コンテはこの記事を作成するに当たって改めて担当者と打ち合わせをし
放送出来ないと分かっていたけれど納得できる形に残したい
との想いで作られ、ラフなコンテでは不十分なので
ラストシーンだけ、いのまたむつみさんに清書を依頼しこの号に掲載された
(それが豪華本にも転載された)
のがほんとの所なんだと思います。

豪華本や各種紙媒体で語られた39話のラストをご覧になって
皆様はどう思われたでしょうか。
生きるってなんだろう・・・・
単なる死に落ちではない、何かしらの暖かさと切なさを感じられたのではないでしょうか。

豪華本もそうですが、この記事も紙媒体であり、完成されたフィルムではないわけですから
これらを見て即、完成していればさぞかし・・・
と過度の期待をしてしまうのは安易だと思います。
(広川さんご自身が
「無い物は美化されがちで、無いからこそ追い求めてしまう
それがバルディオス(ファン)なのかもしれない」
ともおっしゃっていました。)
多少なりとも盛ってある?と疑りを入れつつも
この記事が「読むバルディオス」として素晴らしいのは間違いありません。

スケジュール的に見ても打ち切りが決まり、TV放送の仕事と同時進行で
この記事の編集、執筆が行われたと推測され
改めて物を作る事を生業とした方々の真摯な姿勢が垣間見られて感銘を受けます。

ちなみにこの号の編集後記には

「ファンの不満を紙上で解消とまではいかなかったけど「イデオン」そして特に「バルディオス」は
葦プロのC・D広川さんの大協力があり、ある程度不満は解消できたと思います。」


とあります。
この記事の評判はとても良くてジ・アニメの売り上げにも貢献したそうで
以降、それまで取材に来なかったアニメ雑誌にもチラホラ、バルディオスの特集記事が載るようになった
と伺っています。

豪華本のボリュームには遠く及びませんが
発行部数もそれなりに多くお手ごろ価格のジ・アニメ81年3月号。
ぜひお手にとってご覧になってみてください。

記事中の広川さんのインタビュー ↓ 

 BACK  NEXT


(2014年8月)